初夢にまつわる苦い思い出
昨日、初詣の「初」の定義が曖昧だという趣旨の投稿をしました。また、その投稿中で、「同じ『初』がつく言葉でも『初日の出』の場合は、『元旦の日の出』と定義が明確なので、人による解釈の違いが生じようがない」とも書きました。
その記事をアップしてから数時間後、「初」の定義が曖昧な言葉をもう一つ思い出しました。「初夢」です。
子どもの頃、元日に家族でお雑煮を食べていると、母親が私と弟に「初夢はどんな夢だった」と聞いてきたことがあります。
ちょうどお餅をもぐもぐやっているところだったので、飲み込んでから答えようと思っていたら、父親が「何を言っている。今晩見る夢が初夢だろう」と母親に反論し、それがきっかけとなって、おめでたい元日の食卓が父母の論戦の場と化してしまいました。
結論がどうなったかは覚えていませんが、子ども心に「正月早々そんなことで喧嘩しなくても……」と、何だかいたたまらないような気持ちになったことは記憶しています。
もっとも、それ以前も、それ以後も、初夢が何であったかを気にしたことはないので、まあ、どうでもいいといえばどうでもいい話なのですが、昨日の投稿後そのときの思い出がふと蘇ってきたので、本当のところはどうなのか調べてみました。
初夢っていつ見る夢
まずは『広辞苑第六版』。
元日の夜に見る夢。また、正月二日の夜に見る夢。古くは節分の夜から立春の明けがたに見る夢。
出典:広辞苑第六版(岩波書店)
続いて小学館の『日本大百科全書』。
新しい年を迎えて初めてみる夢。その吉凶で年間の運勢を判断する「夢占(ゆめうら)」の習俗は古く、以前は節分の夜(立春の朝)の夢を初夢としたが、暦制の関係から除夜や元日の夜に移り、やがて「事始め」の正月2日の夜の夢に一定したらしい。
出典:日本大百科全書(小学館)
ついでにもう一つ。
正月に初めて見る夢のことで,その内容からその年の吉凶を占う夢占の意図があった。正月2日が仕事始めであるので,2日に見る夢を初夢といい,〈一富士・二鷹・三茄子(なすび)〉を縁起の良い夢の代表とした。
(中略)
初夢は,西行の《山家集》にも見られるように,古くは節分の夜,すなわち立春の朝の夢をいったらしく,上方にはその風習が残ったが,江戸では大晦日や元日の夜,後には2日の夜を初夢とした。
出典:世界大百科事典(平凡社)
結論:現在では「二日の夜」が主流
以上をまとめると、初夢とは——
(1)節分の夜から立春の朝に見る夢
(2)大晦日の夜から元日の朝に見る夢
(3)元日の夜から二日の朝に見る夢
(4)二日の夜から三日の朝に見る夢
と、初詣に負けず劣らず定義が揺れているようにも見えますが、現在のところでは(4)の二日の夜に見る夢を初夢とするのが一般的のようです。
私が幼い頃の父母の言い争いでは、母が(2)を、父が(3)を主張していたわけですが、残念ながら非主流派同士の争いだったということです。
ちなみに、上の引用からもわかるとおり、二日の夜に見る夢が初夢とされるようになったのは、かつては二日が仕事始めだったから。であれば、毎年仕事始めの夜に見る夢を初夢と呼んでも差し支えないのではないでしょうか。
今年の場合は、四日が仕事始めという人が多いでしょうから、四日の夜に見る夢で今年一年の吉兆を占ってみるのも面白いかもしれません。