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エッセイ

トイレの注意書き トイレットペーパー使用量を巡る日英表現の違い

1度に流すトイレットペーパーの量は5mまでを目安として下さい。

用を足し、トイレットペーパーをカラカラと引き出していると、こんな注意書きが目に入ってきた。

トイレットペーパーを持つ手が思わず止まる。

いま、いったい何メートル引き出したのだろうか。

まったく見当がつかない。

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それにしても5mを越えるとどうなるのだろうか?

冒頭の一文に続いて、注意書きにはこうあった。

環境に配慮した省資源型の便器です。

なるほど、トイレットペーパーを必要以上に使うことは資源の無駄遣いなので、やめましょう——そういうことを言いたい訳か。

ということは、環境に配慮しつつも必要に迫られて5m以上使ったような場合は、特にお咎めなし(そもそも誰が咎めるんだ?)ということだな。

ホッとしながら、ついでに下の英文にも目を通してみる。

Please do not use too much toilet paper. This may back up the toilet and cause it to overflow. Do not use more than 5m of toilet paper at a time.

5mという具体的な数字は同じだが、要求の強さや5mの理由づけが日英両語で大きく異なっているではないか。

まずは要求の強さについて。

日:1度に流すトイレットペーパーの量は5mまでを目安として下さい。

英:Do not use more than 5m of toilet paper at a time.——1度に5mを越える量のトイレットペーパーを使うな。

日本語では「目安」とあるので5m20cmぐらいでも「あっ、それぐらい大丈夫ですよ」と許してもらえそうな気配だが、英語だと5mを1mmでも越えた瞬間に銃殺されそうな勢いである。

次に5m以上使ってほしくない理由である。

日:環境に配慮した省資源型の便器です。

英:This may back up the toilet and cause it to overflow.——(大量のトイレットペーパーを使うと)トイレが詰まり、水が溢れる可能性がある。

先ほど見たとおり、長さ(使用量)に関しては、多少ニュアンスに違いがあるものの内容は共通していた。

ところが、理由の方は日英でまったく異なっている。

日本語が「環境への配慮」という大義を持ち出し、利用者の共感を得ようとしているのに対し、英語の方は「そんなことをすると詰まって、水が溢れる」と述べた上で、間接的にではあるが「後処理が面倒だからやめてくれ」というホテル側の本音を隠そうとしていない。

いったい、どちらの表現の方がトイレットペーパーの使用量を抑える効果があるのだろうか。

それは読み手次第ということになるだろうが、私としては実際に水を溢れさせてしまったときに「だから言ったじゃないか!」と怒られた上に損害賠償まで請求されそうなので、英語を読んだときの方が「いま何メートル?」と少しビクビクしながらカラカラやりそうな気がする。

皆さんはいかがだろうか?

(写真でわかるとおり中国語と韓国語も併記されているが、私には読めないのでそちらには触れていない。どなたか読める方、それぞれどんな内容か教えていただければありがたい)

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