耳かきに潜むリスク
2017年1月3日、アメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が診療ガイドラインの最新版を発表しました。
診療ガイドラインだけあって内容は専門的なようですが、われわれ一般人に理解できる言葉で核心部分を表現すると、要するに「耳かきしちゃ駄目!」ということ。
ガイドラインによると、アメリカでは、子どもの10人に1人が「耳垢栓塞」という症状に悩まされているそうです。耳垢栓塞とは、読んで字のごとく、耳垢によって耳の穴がふさがれてしまうことですが、その原因の一つが耳かきのときに耳垢を奥に押し込んでしまうこと。
そんなリスクを冒してまで耳かきすることはない!というわけです。
耳垢の存在意義
また、そもそも耳垢には耳垢なりの存在意義があり、それなりの役割を果たしているのだから、人為的に掻き出してしまうこと自体、お勧め致しかねるとのこと。
耳垢なんて耳の内側の皮膚の成れの果て、としか見ていなかった私ですから、存在意義があると聞いてびっくり。なんでも耳垢様は以下の様な役割を担っていらっしゃるそうであります。
- 皮膚の保護
- 雑菌の繁殖の抑制
- 保湿
- 自浄作用
最後の自浄作用というのは、新しい皮膚細胞ができると古い耳垢が順繰りに押し出されていくことです。
欧米人と日本人では耳垢の種類が違う
ところで皆さんは、これまでに何人の耳垢を見たことがありますか?
私の場合、自分のと子どものぐらいしか見たことがありません。そして、この極めて限定された経験から「耳垢とは硬くて乾燥したものである」と決めつけておりました。
確かに、日本人など東アジア系の人の耳垢は硬くて乾燥している場合が多いそうですが、欧米人の耳垢は柔らかいタイプが主流とのこと。
であれば、今回のガイドラインは耳垢の柔らかい欧米人向けであり、我々日本人には必ずしも当てはまらないのでは、という疑問も生じます。
しかしながら、日本人の場合も、不適切な耳かきが原因で耳鼻科を訪れる人が決して少なくはないのです。
何かの弾みで耳かきが押し込まれ鼓膜が破れてしまったり、かきむしりすぎて皮膚に炎症や湿疹が出たり、耳垢栓塞で難聴になったり、気持ちいいはずの耳かきが、思わぬ事故や怪我、症状につながることもあるのです。
結論:耳垢はわざわざ掻き出さなくていい
ということで、日本人であってもやはり耳かきはやらない方が無難。1ヶ月に1、2度くらいの割合で、自然に耳の外に出てきた耳垢をティッシュなどで拭き取るだけで十分だそうです。
また、体質的に耳垢が溜まりやすい人は、耳鼻科の受診をお勧め致します。