思い切りの悪い運転手さん

本日は某社にて研修を実施。

会場は同社の研修施設で、事実上「最寄り駅」が存在しないといっていいほど、どの駅からも遠く離れた場所にある。

前日から最寄りのホテル(といっても、これまた駅からも会場からも結構離れている)に宿泊し、7時半過ぎにはチェックアウト。

昨夜遅くチェックインしたときには気づかなかったが、ホテルの駐車場は満杯で、ほとんどの宿泊客がマイカーもしくはレンタカーで訪れている模様。

自分はタクシーで移動するしか手がなく、これは相当な出費だぞと覚悟していたのだが、なんとホテル側が「うちのマイクロバスでよければお送りしますが」と言ってくれた。

断る理由はどこにもないので、喜んで送ってもらうことにした。

料金は無料。マイクロバスに乗っているのは運転手さんと私の二人だけ。交通費を大幅に浮かせることができた上に、広々としたスペースを独り占めできて、すこぶる気分がよい。

フロントガラス越しに前方を見やったところ、車の気配がまったくない。きれいに舗装された道が、どこまでも続いている。

こういう道路状況には不要と思えるのだが、交差点にはしっかりと信号機が備え付けてある。これから向かう地区には工場や研究所などが集中しており、そこで働く人々はほとんどがマイカー通勤のはずだ。今はガラガラでも、朝夕の通勤時間帯には渋滞するほど車の量が増えるに違いない。

われわれ研修講師は、準備のため研修開始時刻の1時間前には会場入りしなければならない。朝早いのははっきり言って辛いが、今日はそのお陰で渋滞につかまることなく、快適なドライブを楽しむことができる。

ここ数週間で一番と言っていいほど晴れ渡った空の下、「今日はついてるな」と思い始めたそのとき、運転手さんが急ブレーキをかけ、マイクロバスはキキキキキーという軋み音と共に荒々しく停車した。

体がつんのめり、おでこが前列のシートにぶつかる。思わず「おっとっと」と声が出た。

フロントガラスを通して前を見続けていたので、どういう状況で何が起こったのかはすぐに把握できた。

間もなく交差点というところで、信号が青から黄色に変わったのだ。

だが、信号が変わったタイミングは、ハンドルを握っていたのが私だったとしたら、ためらうことなく、そのまま交差点を抜けていただろうと思われるタイミングだった。そして、この運転手さんもそのまま駆け抜けるのだろうとばかり思っていた。

というのも、急ブレーキの直前には、明らかにアクセルを踏みこみ、加速しながら交差点に向かっていたからだ。当然一気に交差点を抜けるのだろうと思ったのだが、さにあらず。「突然ですが考えが変わりました!」という感じで、思いっきり急ブレーキをかけたのである。

黄色だから止まるというのは間違っていない。だがら、そのこと自体は非難できないのだが、でも、ちょっと待ってくれ、と正直言いたくなった。

停止線を少し越えて止まったものの、交差する道路に車は一台も走っていない。

目の前の横断歩道にも、交差点の向こう側の横断歩道にも歩いている人は一人もいない。交差点付近のみならず、見渡す限り、われわれとわれわれのマイクロバス以外には、人も車もまったく見当たらないのである。

「どうして止まったんですか」と聞くわけにもいかないので黙っていたが、何とも思い切りの悪い人だなと思ってしまった。いや、あのタイミングで急ブレーキをかけたのだから、ある意味思い切りがいいのかもしれないが……。

それからあとは信号に捕まることなく無事目的地に到着したが、途中で左折するときと、研修会場入り口前に着いたときのブレーキの踏み方も、かなり唐突だった。この人のくせなのだろうか。あるいは、自分の車とブレーキの利き方が違うので戸惑っているのかもしれない。

いずれにしろ、快適だったはずのドライブが、いつの間にかスリル満点のドライブに変わっていた。

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