先日、胃カメラ検査を受けた。杉並区の胃癌検診を受診しバリウム検査を受けたところ、「胃潰瘍の疑いあり。要精密検査」という結果が出たためだ。
胃カメラを飲むのは今回で二度目。初回は七年ほど前のことで、「苦しい」という噂を聞いて覚悟して臨んだのだが、拍子抜けするほど楽な検査だった。
「きっと自分は胃カメラと相性がいいのだ」
前回の経験からそう確信していた私は、どこか勝ち誇ったような、余裕綽々の構えで検査室に入っていった。
が、それから数分後――。
検査室のベッドの上には、目から、鼻から、口からさまざまな液体を垂れ流し、二十歳以上も年下の看護師さんにやさしく背中をさすってもらいながら、「やっぱり噂は本当だったんだ」と心の中で呟く、息も絶え絶えな小太りの中年男性の姿があった。もちろん私である。
どういうわけか、今回の検査は悶絶するほどの苦しさだった。前回とは病院も医者も違うからだろうか。
胃カメラなどという、普通だったらどんなに空腹でも飲み込もうなどとは思わない代物を無理矢理人様の体に挿入していくのだから、考えてみると内視鏡検査というのは実に乱暴かつ残虐な行為である。
そういう乱暴かつ残虐な行為を、相手に一切の苦痛を感じさせることなく完遂することのできた前回の医師は、胃カメラ挿入の「匠」もしくは「マイスター」という称号を得ていてもおかしくない凄腕の持ち主だったのに違いない。
それに比べると今回の先生は、こと胃カメラ挿入という点に関しては「徒弟」レベルの技しか持ち合わせていなかったようだ。
もちろん胃カメラの匠とか内視鏡マイスターといった称号は実際にはないのだろう。だが、胃カメラ挿入に限らず、手術にしろ、注射にしろ、マッサージにしろ、施術者の技術力が問われる行為においては、技術レベルの差が受け手の味わう苦痛(もしくは快楽)のレベルに大きな違いをもたらすことは明らかだ。
因みに最初の病院は、個人開業の胃腸科専門クリニック。胃カメラ検査は、朝食さえ抜いてくれば、予約なしで次から次へと順番でやってくれる(この辺りがすでに匠っぽい)。改めてネットで調べてみると「日本消化器内視鏡学会認定指導医」とのこと。
一方、今回の病院は複数の診療科をもつ総合病院で、同じ科でも曜日や時間帯によって先生が代わるタイプの病院。担当してくれた先生の経歴を見ると「日本消化器内視鏡学会認定専門医」とあった。
正確なことはわからないが、やはり指導者の資格を認められた「指導医」の方が「専門医」よりも、内視鏡を扱う技術に関しては上ではないだろうか。
どの病院で検査を受けようかと迷っている方にとっては、匠やマイスターほど素人目に分かりやすくはないが、この「日本消化器内視鏡学会」の「指導医」なのか「専門医」なのか、それともそもそもその学会から何の認定ももらっていないのかは、一つの分かりやすい目安になるのではないだろうか。ご参考まで。