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エッセイ

20年後の家族旅行

8月3日から5日まで、シオンとふたりで熱海を旅してきた。

男ふたり旅は、昨年3月の鹿児島/桜島から数えて3回目になる。

実は2回目も熱海で、訪れたのはつい5ヶ月前の今年3月。
そのとき、冷たい風に吹かれながらもビーチで大はしゃぎしていたシオンが、「夏になったら泳ぎに来ようよ」と言っていたので、今回の目的地は迷わず熱海に決まった。

今回泊まったのはホテルニューアカオ。

私は別のホテルを予約していたのだが、留守番役のママがネットや旅行パンフレットを詳しく調べて、「ここが楽しそうだよ」と予約してくれたのだ。

ホテルニューアカオを含むアカオリゾートには、アカオビーチリゾートという施設がある。3月に遊んだのは熱海サンビーチだったが、今回はこのプライベートビーチ風のアカオビーチリゾートで、3日間、海とプールをたっぷりと楽しむことができた。

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このビーチで泳げるのは3時半までなので、夕方から夜にかけてはホテル内で楽しむ。

シオンのお目当ては普段は連れて行ってもらえないゲームセンターだ。

ここで生まれて初めのエアホッケーに大歓声を挙げ、30分600円の卓球で大汗をかき、私とふたりでチャレンジした射撃系ゲームではその日のハイスコアをたたき出した。

また、襲いかかるキングギドラをゴジラの尻尾で攻撃するというゲームでは、数度のチャレンジの末、見事時間内に6回命中させ景品を獲得した。

6回目が当たったときの、喜びと信じられないという気持ちがない交ぜになった表情が印象的だった。たかがゲームとはいえ、自分にもできるという自信を得たようで、親としてはそれが何よりも嬉しかった。

その他、毎回の食事や温泉、部屋での会話など、書き始めると切りがないほど忘れがたいエピソード満載の至福の旅であったが、帰宅直後にシオンが語ってくれた将来の夢を聞いて、私だけでなくシオンもこの旅を心から堪能してくれたことがわかり、心がほかほかと温かくなった。

シオンが語ってくれた夢はこうだ。

「パパ、オレに子どもができたらパパはおじいちゃん?」

「そうだね」

「オレも子どもは男の子がいいな」

「そうか」

「あ、でも女の子でもものすごくかわいがるけどね」

「そうだよ。自分の子どもだったら、男の子だって女の子だってものすごくかわいがるよ」

「そうだね、オレもパパみたいにうんとかわいがるよ」

そして、こう続けた。

「あのね、パパ、オレに子供ができたら、男の子でも女の子でも、オレとパパとオレの子どもで旅行に行こうね。そのときはオレがつれていってあげるね」

「ありがとう。楽しみにしているよ」

「あ、ママとじいじも一緒につれていってあげよう。オレが運転するから、パパは特別にオレの隣にすわっていいよ。そして、オレの子どもとママとじいじがうしろの席ね」

「あれ、シオンのお嫁さんはどうするの?」

「え?」

「シオンの子どものママ。シオンのお嫁さん」

「あ……」

あと20年も経つと今の家族に自分の子どもが加わるというイメージは描けたものの、自分の奥さんのことはすっかり抜け落ちていたらしい。

だが、要するにシオンが私に伝えたかったことは、「自分も親になったらパパみたいに子どもをうんとかわいがるからね、自分もパパみたいに子どもを旅行につれていって、うんと楽しい思いをさせてやるからね」ということなのだろう。

私に向かってそう言いたくなるほど、シオンもこの旅に満足してくれていたのだ。本当にふたり旅に出てよかった。

そんな思いを抱きながらシオンを見つめていると、黙って何かを考えていたシオンの表情がパッと輝いた。

「ねえ、パパ、こういうのはどう。車は2台でいくの。で、1台目はオレが運転して、パパがオレの隣にすわって、オレの子どもとママとじいじが後ろにすわって、もう1つの車はオレの奥さんが運転するの。そしたら、オレの奥さんも一緒に行けるでしょ」

もう少しバランスのよい組み合わせもあるんじゃないかとも思ったが、シオンの方は我ながらいい考えを思いついたと得意げな表情だ。

「そうだね、それがいいね」

そう答えたら、シオンのお嫁さんや孫と一緒に車2台に分乗して家族旅行に行く日が待ち遠しくなってきた。

それが20年後だとしたらシオンは26歳、パパは74歳、ママは66歳、じいじは101歳だ。

よし、がんばろう。

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